9月某日
「友子!誕生日プレゼント渡すから目をつぶって!」
そう言うと、友子は驚いた顔をして
「え?なんで?」と尋ねてくる。
その反応は無理もない。だって、友子の誕生日は9月じゃなくて、来月、10月だからね。
まあ、そんなことは知ったこっちゃない。渡したいから、渡す。
「早く!目をつぶれ!」
「え? あ、はい。」
私に気圧され目をつぶる友子。その隙に、ゴゾゴゾとプレゼントを用意し目の前に持って行く
「目を開けていいよ」
目を開ける友子
「なにこれ!?」
手に取り中身を確認する。
「あ! あ・・・あ〜あ〜」
プレゼントを認識した瞬間、友子の顔に落胆の色が浮かぶ
「む〜む〜」
ついでに不満そうな謎の鳴き声も聞こえる。
プレゼントの中身はランニングシューズ。砂浜でも走れるように、厚底で軽めのシューズを選んだ。
なぜランニングシューズかと言うと、友子は3月に卵巣癌の手術を受け術後7キロ痩せてしまったが、その後順調に回復し、体重も見事に戻る。
そこまでは良かったのだが、このままの勢いで体重が増加すると太り過ぎで爆発する危険性が出てきた。
爆発するのはマズい。後片付けが大変だ。
そこでダイエットと、体力向上の為に愛情を込めた少し早い「誕生日プレゼント」を渡した。
友子は不満そうな顔で「誕生日プレゼントってもっといいものだと思っていた・・・」
お!なんだ!?愛情いっぱいのプレゼントを批判するのか?
「とりあえず履いてみて」
私がそう言うと、嫌そうな顔を微塵にも隠さず、渋々×100 ぐらいの感じで履き始めた
すると友子が
「あ!サイズが合わない!」
なに?
「全然入らない!こりゃダメだ!不良品だ!返品だ!」
と騒ぎ始めた。
そなわけあるか!こっちはちゃんと測ってオーダーしてるんだ!つべこべ言わず履きやがれ!
生まれて初めて靴を履かされる猫のごとく暴れる友子を押さえつけ、ランニングシューズを履かせる。
おら!ピッタリじゃねか!!
「うわー!人生で一番嬉しくないプレゼントだよー!」
喚き散らかす友子。
そして次の日
「ねえ本当に走るの?」
ランニングシューズを履き、いまだに往生際の悪い友子。
ここまできたんだから観念しなよ。ハイハイ!位置について!よーい!
なぜかクラウチングスタートをしようとする友子。
ヨーイ!ドン!
「ウサ!」
「イン!」
「ボル!」
「ト!!!!!!」
友子は謎の掛け声を発しなが走るけど、凄まじく遅い・・・
友子は夕日に向かって走り始めるのであった
友子の癌闘病日記次回へ続く。